カレンダー――基本的な使い方
スケジュールを管理するにあたって、弁護士業界だと「訟廷日誌」という手帳を使っている弁護士が今もたくさんいます。筆者は弁護士になってからすぐにスマートフォンで日程管理を行っていたため、実のところ一度も訟廷日誌を使用したことがありません。ですので、その使い勝手の良さはよく知らないのです。
さて、スマートフォンで使用するカレンダーと言えば、Googleカレンダーか、iCalの二択になるでしょう。いつでもどこでも確認できるという便利さと、万一、スマートフォンを紛失しても復旧できることが魅力ですね。以前のスマートフォンはスペックも低かったため、カレンダー起動に時間がかかったり、フリーズしたりと、いざという時に使えないという問題がありましたが、最近の機種ならストレスなく利用することができます。
筆者も実務でGoogleカレンダーを使用していますが、訟廷日誌を開く速度となんら遜色ありません。いまから、Googleカレンダーの使用に慣れておくとよいでしょう。
使用する上での工夫ですが、まず、プライベートな予定と、授業・自習の予定とで色分けをします(授業と自習でさらに分けてもよい)。プライベートな予定には、「家族と出かける」「デート」「サークル活動」の予定等を登録することになります(いかに受験生といえども一定のプライベートな予定はあってしかるべきです)。将来実務に就いたら、同じようにプライベートな予定と、仕事の予定とで使い分けることになります。初期設定は、Web版のGoogleカレンダーを使用した方が捗ります。
- パソコンで Google カレンダーを開きます。
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左側の [マイカレンダー] の上にある、[他のカレンダーを追加]をクリックし、さらに [新しいカレンダー] をクリックします。
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カレンダーの名前と説明を追加します。このとき、1つを「プライベート」に、もう1つを「授業・自習」等とわかりやすい名称をつけます。
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[カレンダーを作成] をクリックします。
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カレンダーが追加されたら、追加されたカレンダー名の右側に3つの点のアイコンがありますので、これをクリックして、プライベートと授業・自習とで色を変更しておきます。
色を変更したら、授業・自習のカレンダーへ、予定を追加していきましょう。多くの場合は、時間割をそのままいれることになるでしょう。Googleカレンダーでは、連続した予定の登録が簡単にできるようになっています。半期15コマの授業が多いと思いますが、初日を登録する際に、「毎週○曜日、15回繰り返す」として登録すると、一度に15コマ分が自動的に登録できます。
登録の名称ですが、授業の科目名をそのまま書くのがわかりやすくてよいでしょう。筆者の場合は、ロースクールの授業であれば「ロー-刑法演習」などというように「ロー-」というのを頭につけていました。他に、「ゼミ-民法」「答練-行政法」などと登録しておくと、「何の科目の何を行うのか」がわかりやすいということです。また、答練の予定一覧だけ見たいという場合に、「答練」で検索することができ便利です。カレンダーは複数作成できるので、ゼミ、答練で別のカレンダーを作ってもよいのですが、あまり細かく分類しすぎると一覧性が悪くなることもありますので、ご注意ください。
プライベートと授業・自習を分ける理由
上記のとおりカレンダーを分けた理由はなぜでしょう。プライベートな予定を伏せたい場合があると思いますが、そういう場合に、カレンダーを分けておくことで、一方を非表示に設定することができるのです。どちらかというと実務向けのアドバイスになりますが、仕事につくと、カレンダーを事務所のメンバーと共有せざるを得ないことが多いため、プライベートな予定は見せたくないといったときに、一方のカレンダーのみを共有するという方法を取ることができるようになります。
カレンダー、個別の予定を共有する
学生がカレンダーそのものを第三者と共有する事態というのはあまり考えられませんが、学生同士のゼミを組む際などには、共通の予定は共通に登録したいという要請があるかもしれません。この場合は、特定の予定についてのみ共有することができます。予定を登録する際に、「ゲストを追加」の部分にメンバーのメールアドレスを入れると追加することができます。こうすれば、他の予定を晒すことなく、特定の予定のみを共有化することができます。
なお、カレンダーごと共有する場合には、カレンダー名の右側にある3つの点をクリックすると「設定・共有」というメニューが出てきますので、そちらで共有することができます。
タスク管理
日々の予習の締切についてはあえてタスクとして登録するまでもないでしょう。スケジュールで次の授業の予定を確認していけば、自ずといつまでには予習をしておかなければという締切は見えてくるはずです。
ここでは予習の締切というタスクではなく、○月○日までに択一刑法の過去問○年度分を終了させるといったタスクを登録する方法を説明します。タスクを管理するアプリには、Todoist というタスク管理専用のアプリもあり、人気がありますが、新しいアプリの使用方法を勉強している時間はないでしょうから、ここはGoogleカレンダーに付属しているGoogleタスクで十分だと思います。
Googleタスクの使用法は単純明快で、締切日とタスクさえ登録すれば、それが、Googleカレンダーにも表示されるという仕組みになっています。スケジュールとタスクがGoogleカレンダー上で一覧できるのは非常にわかりやすくて便利です。
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登録したタスクは、Googleカレンダー上に表示されるため、予定とタスクを同時に見ることができる。 |
どのようにしてタスクを登録しておくとわかりやすいかというのは個人の好みによる部分が大きいとは思いますが、本連載第1回の「データの保存・管理」で述べたフォルダ・ファイル名に準じてつけると一貫性がありわかりやすいと思います。
タスクについても、リストで表示・非表示を分けることができます(上記例の「サンプルリスト」の部分)。リストで、プライベートなタスク、勉強に関するタスクと分ければ、カレンダー上も色分けして表示できるので、見た目はわかりやすくはなりますが、リストを切り替えるという手間が発生するので、筆者としてはリストは1つに統一すれば十分ではないかと思います。
授業の予習・復習 |
刑事法系演習1予習 早乙女ゼミ予習 民事法総合第3問復習 刑事法系演習2第2問(職質)レポート締切 |
過去問 |
司法試験H28択一 司法試験H29論文・会社法 司法試験H25択一公法系1回目 |
基本書 |
塩野宏・行政法(1)通読1回目 ※何度も回す場合には、回数などを書いて、タスク完了したら2回目に変更して、締切日を更新すればよい。 |
なお、Googleタスク専用のアプリであるGoogleToDoリストというアプリがリリースされました。Android版とiOS版の両方があります。非常にシンプルなインターフェースで、使い方はすぐにわかるようなものになっています。アプリからタスクを登録すれば、当然、Web版とも同期するので、Googleタスクを利用してる場合にはインストールしておきましょう。
日程調整
今どきの学生であれば、イベントや懇親会の日程調整のために便利なツールを使って調整しているのではないでしょうか。
弁護士業界ではどうかというと、メールに参加予定者のメールアドレス全員分を入れて、都合の良い・悪い日をそれぞれが送信し合い、幹事がそれを見て調整するという方法をよく見かけます。また、裁判所との裁判の日程(期日)の調整は、裁判所からファックスで候補日が複数上げられており、それにチェックを入れてそれぞれの当事者がファックスで裁判所に返信し、裁判所がそれをみて両当事者の都合の良い日を設定する、という流れで日程調整が行われます。現在、裁判手続のIT化を検討している「裁判手続等のIT化検討会」によるとe事件管理(e-Case Management)のひとつの内容として(参考:裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ-「3つのe」の実現に向けて-(案))、第一回口頭弁論期日の調整・指定をオンラインで調整できる仕組みも考えられているようですので、これらが早期に導入されることを期待したいところです。
さて、話はそれましたが、例えば、複数人でゼミの日程を調整したいという場合はどうするかという問題です。直接会って話し合って決めることができれば、それに越したことはありませんが、それができない場合にどうするかです。
LINEスケジュール
仲の良いメンバー間であれば、LINEで相互につながっていることが多いのではないでしょうか。そうだとすると、LINEの関連機能であるLINEスケジュールを利用するのが便利です。筆者も仲間内でイベントがある場合は、LINEスケジュールで日程調整しています。LINEスケジュールの弱点は、時間を指定しての調整ができないことなので、時間帯は指定した上で、調整することになるでしょう。
ただし、LINEはグループラインのトークが始まってしまうと勉強が中断してしまいがちです。グループラインの通知はオフにしておくべきだろうと思います。
指定された日付から、招待者が、○△✕で回答する。 |
回答すると、○△✕で回答した人数が表示される。 |
ちょー助
LINE仲間でない場合は、外部のサービスを利用します。ちょー助もスケジュール調整システムで、こちらはLINEスケジュールと異なり時間単位での日程調整をすることも可能となっています。インターネットに繋がる環境さえあれば、特定のアプリを入れていなくても日程を調整できるのがポイントです。LINEでは繋がりたくないが日程調整をしたい、というような場合にも使えますね。ありがちな「行けたら行く」という回答も許可できるところはおもしろいですね(もっとも、その程度の参加意欲の者は、経験則上、メンバーに加えないほうがいいですね。)。
勉強を習慣化する
やりたいときにやるという勉強スタイルでは、なかなか目的の試験を突破できません。継続的持続的に、繰り返し同じことを繰り返すことが大事だと思います。司法試験で問われている能力は、複雑な問題文を分析して、その中から法律的に意味のある事実を抽出できるかどうかでしょう。繰り返し訓練することが大事です。今回の連載を執筆するにあたって、勉強を習慣化するアプリを探してみたところ、StudyPlusというアプリがあるようです。
使い方は、はじめに教材(基本書や過去問などの書籍を登録することもできるし、ざっくりと、刑事訴訟法という括りで登録することもできます)を登録した後は、勉強が終わった後に勉強時間と学習量(読んだ合計ページ数や範囲)などを記録すると、それがグラフとなって一覧表示されるようになっています。教材に応じてグラフの色が異なるため、その日に何時間、何を勉強したのかが一目瞭然にわかります。記録が貯まっていけば、ずいぶん頑張っているなと自分を褒めることもできるかもしれませんが、一方でこれしか勉強していないのかと反省するきっかけにもなるかもしれません。
おもしろい機能だなと思ったのが、他のユーザーの勉強時間が分かる機能です。例えば、Aさんというユーザーが、某基本書を1時間30分読みましたというのがタイムラインで表示されます。全く知らないユーザーであっても、他人ががんばっているのを見ると自分もがんばろうという気持ちにさせてくれそうな予感がします。
まとめ
司法試験に限らず、資格試験は目標がはっきりしています。2年後なのか、3年後なのか、その日の試験に合格できるように自分のスケジュールを組む必要があります。遠い先のように思えても、その日はあっという間に訪れますので、早いうちから綿密に計画を立てておくことが大切です。ただし、スケジュール通りに行かなかったとしても、その時はリスケするという心の余裕も大切ですので、根を詰めすぎずに、ちょうどよく頑張りましょう。