第3回 授業内でのIT活用――録音

金澤「先生は実務で打ち合わせなどを録音することってありますか」
先生「そうだね。基本的には話を聞きながら整理してメモをとるからそれで十分だけど、大事な打ち合わせなど聴き逃しや行き違いがあっては困る場合は、念のため録音もしておくことはあるよ」
金澤「やはり中心はメモになるのですね」
先生「聴いて、整理して、書き出すことで理解することができるから、録音はあくまで補助的なものにすぎないよ。これは勉強でも同じ。録音しているからと思って、ムーディー勝山のように右から左へ聞き(受け)流していたら駄目(笑)」
金澤「少し古いネタですね・・・。でも学生の立場としては、法律の勉強に馴れない頃は要点もわからないので、ノートをとるのも上手でなく、念のため録音して聴き逃しに備えておきたいです」
先生「そういう学生のために、今回は録音について考えてみることとしよう」

 

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 講義の聴き逃しを心配するなら、講義を録音しておくことになります。講義の録音については、禁止されている場合があるので、所属校や担当の先生に確認したうえで行ってください。ロースクールによっては、ICT(Information and Communication

Technology)を活用して、録音・録画や遠距離での双方向授業なども行っているところもあります。録音の方法は、パソコンを使用する方法と、スマートフォンを使用する方法の2通りがあります。ボイスレコーダーを購入する方法もありますが、あえて専用端末を購入しなくとも授業の録音程度であれば十分に用は足りますし、荷物も増えるのでお勧めできません。

パソコンの場合

録音の方法

 パソコンで録音する場合は、eノートを作成しながら、バックグラウンドで録音をしておくことになります。最近のパソコンは、Skypeなどのテレビ電話機能が使えるようにマイクとカメラが付いているものが多く、そうでない場合は、録音用にマイクを購入して、マイクジャックに挿入しておく必要があります(音質を少しでも良くしたいなら、マイクは購入する必要があります)。ファイルの保存形式は様々ですが、mp3形式や、wma形式などの圧縮されたものがよく、wav形式はファイルサイズが肥大化するため避けたほうがよいでしょう。

 フリーソフトとしては、【♪超録 - パソコン長時間録音機】が比較的軽量で、スペックの低いパソコンでも使用できます。ただし、mp3形式機で保存するには、別途dllファイルというものを追加しなければならず、ガイドのとおりに進めればよいのですが、やや困惑するかもしれません。また、フリー版は1ファイルにつき90分までの録音時間の制限があります。多くの学校では、1コマ90分ですから、ギリギリ足りるのではないでしょうか。仮に、2時間の講座や講演であれば、休憩や雑談中にファイルを一度保存して、続きを新規録音すれば対応できます。こうすると1つの授業について、複数ファイルが作成されることになりますが、ファイル名に(1)(2)・・・と付け加えて管理してもよいですし、【SoundEngine】などのオーディオ編集ソフトを使ってファイルを結合して1つにまとめることもできます。

 新しいソフトを入れたくないとか、入れ忘れてしまったような場合は、Windows7以前なら【サウンドレコーダー】、Windows10なら【ボイスレコーダー】を使用する方法もあります。こちらは時間制限がないので、2時間の講演などでもファイルを一度保存する手間がなくなります。デメリットとしては、ファイルの保存形式を選べないということでしょうか(サウンドレコーダーはwma形式、ボイスレコーダーはm4a形式)。もっとも、多くの再生ソフトは様々な形式のファイルを再生できますので、ファイル形式については、こだわりがなければ気にしなくてよいです。

録音後のファイル名

 録音後は、録音したファイルのファイル名を変更します。標準のファイル名は、おそらく2017-06-17といった日付になっていると思うので、これを適切な名前に変更する。音声までは検索にヒットさせることはできませんので、講義名(+論点)+日付といったファイル名が適当でよいでしょう。たとえば、「刑事法系演習2(訴因変更の要否)_20170617」といった風に(日付は任意)。ファイル名の付け方については、前回の記事を参考にしてください。

録音後のアップロード

 パソコンのハードディスク内に保存された録音ファイルは、所定の保存場所から、Dropboxの該当講座のフォルダへコピペしておきます。もとの録音ファイルは削除し、Evernoteへはアップロードしなくてよいでしょう(後述)。

 なお、Dropboxの容量はフリー版は2GBなので、音声ファイルを保存しておくとあっという間に容量不足に陥ってしまいます(90分だとmp3形式で約80MB程度なので、2GB=2000MBとすると25コマ分程度しか保存できない計算)。どこでも、どの端末でも聴けるという面ではDropboxに保存することも有用ですが、録音はあくまで補助手段にすぎないと考え、パソコン内のハードディスクに保存しておくのが無難でしょう。

スマートフォンの場合

録音の方法

 卓上にスマートフォンを出すことを禁じられていなければ、スマートフォンを使用して録音したほうがよいでしょう。パソコンに余計な負荷をかけずに済みますし、もともと電話ですので、マイクを別途購入する必要もありません。もちろん音質を良くしたいのであれば別途マイクを購入すればよいですが、発言が聞き取れれば十分なのですから、マイクを用意するほどのことではないでしょう。

 録音アプリは、標準では入っていませんので、それぞれのアプリストア(AndroidならGoogle Playストア、iPhoneならApp Store)からインストールする必要があります。筆者が使っているのは、Green Apple Studio製の【ボイスレコーダー】です。使い勝手がシンプルで、mp3形式で保存でき、保存時間の制限もないことから使いやすいです。また、monchack製の【盗み聞き】というアプリも併用して使っています。こちらは、Widgetとしてホーム画面に録音開始ボタンを置くことができるので、アプリを起動して録音ボタンを押すという手順を省略し、すばやく録音を開始できるところが便利。実務においても、録音が必要な場面に出くわすことがあり、ポケットに入れたままでもそれなりの品質で録音できるので、重宝しています。

録音後のファイル名

 パソコンの場合で記載したのと同様の変更をしておくとよいです。

録音後のアップロード

 録音したファイルは、標準設定だとスマートフォン端末または外部SDカードに保存されていることと思います。これを端末やSDカードに保存したままだと、将来機種変更したときや、故障したときなどに録音ファイルも消失してしまうため、Dropboxの講義の該当フォルダへアップロードしておきます。音声データは、容量が大きいため、アップロードはWi-Fi環境下で行うほうがよいです。もし、学内にWi-Fi環境がなければ、家やフリーWi-Fiのあるカフェなどで行いましょう。SDカードに保存してあれば、それを取り出してSDカードリーダーを使ってパソコンに直接読み込ませる方法でもよいです。

 録音ファイルもEvernoteへ可能ならアップロードしておくと、後に検索したときに録音の有無は確認しやすくなります。ただし、Evernoteベーシック版は月間アップロード容量が60MBなので、もしすべての講座を録音していたならば、それらすべてをアップロードするのは困難です。個人的には、録音ファイルはEvernoteにアップロードしたところで、音声内容の検索まではできませんので、Dropboxに保存するに留めておいても十分だと思っています(それどころか、先に述べたとおりパソコンへの保存で十分)。代替手段として、「講座名+録音あり」という内容のEvernoteのノートを作成しておくという方法があります。

 

 さて、ここまで読まれたあなたは、すでに授業内でITを活用する術を身に着けたので、IT受験生として他の受験生を一歩リードしたものといえます。しかし、受験生というのは、寝ても覚めても勉強です。移動中というスキマ時間も勉強に活用できる大切な時間ですから、試験に合格したいのであれば、ゲームやSNSで時間を消費している場合ではありません。移動中にできることは限られていますが、ITを活用して勉強に使えるものはデジタルデータ化していますので、簡単に持ち運ぶことができます。そこで、次回は移動中におけるIT活用術に触れたいと思います。

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